とめはね!

郡谷君の修論発表にて石川先生が問題提起.さまざまな書家の墨蹟をデータとして与え,それぞれの書家のスタイルを学習させるにはどうしたらよいか.学習後は,書を見せて誰の書いた書かを判別させる.あるいは「あの書家だったらこの字をどう書くだろうか」を推定させる.

このような問題も,「文字×スタイル」という直積空間を作る.だから高階SOM系の応用事例になる.また「普遍モデル(文字)×個性(スタイル)」の例題にもなっている.しかし「スタイル」を学習するにはどうしたらいいか.これはとても難しい.人間はロジカルにスタイルを見抜いているわけではないだろうから,古典的なAIの発想では無理.ではどうしたらいいのだろう.
この問題についてはD. ホフスタッターの「メタマジックゲーム ~科学と芸術のジグソーパズル~」の中でも取り上げられている(ということを昨日,友人が思い出させてくれた).いくつかのパラメータでフォントのスタイルを定義し,文字の基本形にスタイルを適用することでさまざまなフォントセットを生み出そうという試みは,かのクヌースがすでにやっていて,TeX のフォントを生成するMETAFONTがそれ.そしてホフスタッターの考えは,ある意味でMETAFONTに対する批判になっている(実用的な意味ではなく,クヌースのやり方であらゆるフォントが作れるという考え方に対する批判.METAFONTの実用性についてはまた別の問題).

「メタマジックゲーム」の中では,さまざまなフォントの中に潜む「精神」を私たち人間が感じられるということについても述べているが,ホフスタッターの言う「精神」という単語は,現代的な人工知能の問題で言う「隠れたスタイルやポリシーを推定する」問題に等しい.このような問題はいたるところに表れる.おそらく中心的なテーマになるのだろう.

ご存知のように,ホフスタッターは「ゲーデルエッシャー・バッハ」の著者.まずは「ゲーデル......」から読むことをすすめます.