ニューロンのないニューラルネット?

ニューラルネットはふつう,「ニューロン」とか「ユニット」とか呼ばれる素子があって,それらをばしばしつなげて何か学習できる機械を作るというイメージが一般的かと思います.(あ,ここで言う「機械」というのは人工的に作った装置を全部ひっくるめて「機械」と呼んでいて,実体の存在しないアルコリズムやプログラムも全部機械です).

でも,「同じ計算結果が出るなら」「もっと良い結果が出せるなら」別にニューロン素子の組み合わせにこだわる必要なんか全然なくて,それを追い求めていくと,もう全然ニューラルネットっぽくないアルゴリズムになってしまいます.「出発点がニューラルネットだった」ということを除けば,もうぜんぜんニューロンっぽくない.まったく違うって言ってもいいかもしれません.

ニューラルネットに対する大きな誤解がひとつあって,「脳はニューロンからできている.だからニューロンのような素子をいっぱい集めたら脳のような賢い計算方法が生まれる(に違いない)」という誤解.そうなんですよ.脳がすごいのは確かだけど,じゃあ表面的に脳をまねしたからって賢いものができるわけは絶対にないし,脳とは(表面的には)違うやり方で賢い計算方法を開発したら,実は脳も同じ(見かけではなく本質のところで)ことをやっているかもしれませんよね.

というわけで,私は脳のように賢いこともできるような,新しい計算方法や原理を見つけたいと思っていて,それがうちの研究室の大きな方向性かなあ.実際にはできたアルゴリズムを画像処理やロボットなどに応用して試してみるのも研究のうちなので,それぞれの学生さんはいろんなことをやっていますけどね.

よく言われることですが,「大事なことは目に見えない」のです.